修理

設計者が自分の設計した商品のサービスメンテ情報を知ることはとても重要です。

市場に出て、実際にユーザーに使われる中でどんなトラブル、不満が発生しているのか、しっかり把握する必要があります。

それらを早期に解決することで人気の商品になるし、場合によっては次の商品開発のヒントが見つかるかも知れません。

ただし、市場のサービスメンテ情報は設計者自身の目と耳で確かめることが必要です。

どんな仕事にも共通ですが、現場を知ること、一次情報を得ること、これは仕事の基本です。

 

新米設計者が東京でメンテ調査

私がまだ新米設計者だった頃、市場のメンテ情報収集のために1週間ほど東京へ出張したことがありました。

本社は関西にあったのですが、東京が一番大きな営業所でユーザー情報も多く集まっていました。

設計から30年経っても売れ続ける人気商品

メンテ調査を行うのは私が入社1年目から関わった事務機と、3年目に初めて主担当で設計した事務機の2機種でした。

この2機種、実は設計から30年以上経つのに未だに売れ続け、現在でも当時の会社の商品カタログに大きく載っています。

私が実用新案7件を取得した思い入れのある商品でもあります。

さて、東京営業所のサービスエンジニアとミーティングを行い、ユーザーの訪問履歴などを見せてもらいながらメンテの状況説明を受けました。

サービスエンジニア達の説明では特別困っていることもなく、問題なし、といった評価でした。

朝から夕方まで都内を回る

そのミーティングの後、私も実際にユーザーを回ることになりました。

サービスエンジニアは何人かいたのですが、そのうちの1人に1週間、同行させてもらうことになりました。足は会社の営業車を使いました。

私が担当した2機種だけを見て回るわけには行かなかったのですが、出来る限り2機種メインでスケジュールを組んでもらいました。

メンテ業務は朝の10時くらいに営業所を出て、戻って来るのは夕方です。何しろ都内を回るので道路事情によってはなかなか思うように件数をさばけません。

渋滞

私たちは休憩する暇もなく、次から次へとユーザーを訪問しました。お昼の食事もあわただしく、サービスの人たちの苦労が少し分かりました。

聞いた話と実際に見た実情のあまりの違いにビックリ!

さて、私はサービスエンジニアに同行して正直驚きました。予想以上にトラブルが多発していたからです。

事前の説明では問題なし、と評価されていた商品で次々とクレーム処理がされています。聞くと見るとは大違いでした。

確かにそれは重大なトラブルではなく、簡単な部品交換や調整で直るものばかりでした。

中にはユーザーの使用法が間違っているために発生したトラブルもありました。

ただ今まで私が知らなかったトラブル、知らなかった使われ方を目の当たりにして、すごい参考になりました。

改善すべき点がいくつも見つかりました。

無期雇用派遣

私の勘違いとは?

そして1週間の同行調査が終了したとき、私は大きな勘違いに気付きました。

サービスエンジニアから報告があがらないのは、決してトラブルがないからではなく、エンジニアが困っていないからだと。

つまり、サービスエンジニアの仕事はユーザーのトラブルを解決することであり、解決出来ればそれでいい訳です。

むしろトラブル解決によって仕事の満足感、達成感さえ覚えているのです。

彼らにとっての問題は、トラブルの発生そのものではなく、トラブルが解決できないことです。

解決できるトラブルは彼らにとっては仕事であり、極端に言えばなくては困るのです。

従って、重欠陥、現場で修理出来ないようなトラブルは速報で上がってきますが、対応可能なトラブルは報告があがって来ないことも多いのです。

でも、設計者の目からみるとすぐにでも対策したい不備、欠陥も含まれているのです。

実際問題、全てのサービスエンジニアがその時同行したエンジニアと同じではないでしょう。

ささいなトラブルでも几帳面に報告してくれるエンジニアもいます。

ただ、それをデータで見るのと、ユーザーを訪問して自分の目で見るのでは情報量が大違いです。正確さも大違いです。

 

現場を知ることは仕事の基本

設計者がサービスエンジニアを通してのみユーザー情報を把握するのは危険であり、やはり定期的に自分の目と耳でしっかり確かめる必要があると痛感しました。

新米設計者の私はその体験以後、可能な限り営業マンやサービスエンジニアと同行して客先を訪問することにしました。

たぶん、設計部署の中で私が最も同行回数が多かったと思います。

生産技術

商品の実態、ユーザーの実態を知ることが出来ると同時に、サービスエンジニアの実体や営業マンの実体を知ることが出来ました。

やはり一次情報は何より貴重であり、設計の仕事もまた現場を知ることが基本だと知りました。

あの東京での1週間の経験は、設計者としての私の仕事に対する向き合い方を固めたきっかけだったのです。