今回は設計が終了して、製品化を前に行うコストダウン検討についてお話します。
どうすれば効果的にコストダウンを行うことが出来るか?その手法の1つにパレートの法則を使ったコストダウンがあります。
非常に基本的、初歩的な内容ですが、しかしとても重要な内容です。
ものづくりエンジニアになって間もないあなたに贈る記事です。ぜひコストダウン検討の参考にして下さい。
チリも積もれば山になるのか?
『チリも積もれば山となる』
これ、小さい頃からよく聞かされましたよね。1円だって粗末に使ってはいけない。1秒でもムダに過ごしてはいけない。
小さいことの積み重ねが大きな結果を生み出すと言う意味ですね。
でも・・・本当にチリも積もれば山になるのでしょうか?
設計業務における「チリ」は果たして山となるのか、今回はそれを検証しま
しょう。
「チリ」から始めていては間に合わない
あなたが新商品を設計するとき、必ず原価のターゲットは決まっているはずです。
売値も利益見込みも決まっているし、むろん、開発費の回収計画も決まっているでしょう。
だけど、最初の試作から見込み通りのコストに収まることはまれです。どうしても最初は機能優先になってしまい、コスト検討は後回しになりがちですよね。
一方で以前、「生まれは育ちでカバー出来ない」と言うお話をしましたね。商品の原価の70%は設計段階で決まってしまうのです。
目標の原価に届かない場合、設計まで戻してコスト削減の検討をしないと、追いつかないのは当然なのです。
そこで「コストダウン検討会」なるものを開催することになります。

私が以前、事務機の設計をやっている頃は「ネジ1本10円」の世界でした。ネジを1つなくすと、10円のコストダウンという訳です。
直接ネジの購入費が1本10円と言うことではなく、タップ加工、ネジの取り付け工数、ネジの在庫管理費、これら合わせて1本10円と計算していました。
事務機の市場価格は本当に競争が激しく、まさしくネジ1本でも減らして何とか原価を下げるのに必死だったのです。
この「ネジ1本10円」のコストダウンは、まさしく「チリも積もれば」の発想ですね。
だけど、これでいくらコストダウンが出来るでしょうか。
ネジを100本なくしても、1000円のコストダウンにしかなりません。1つの製品でネジを100本も削減するなんて、別の意味でかなり困難です。
この発想の延長で「チリ」を探して積んでいたら、「山」になる前に吹き飛ばされるか、掃除機で吸い取られてしまいそうですね。
そう、目標のコストダウン額には到底たどり着きません。
現代のように目まぐるしく、あなたを取り巻く環境、状況が変化し続ける時代に、「チリも積もれば山となる」式の発想は、間に合わないのです。
パレートの法則を知る
あなたは『パレートの法則』を知っていますか?別名『80:20の法則』とか、『2:8の法則』とか呼ばれます。
これは、イタリアの経済・社会学者ヴィルフレド・パレートが見つけた法則です。
どんな法則か、分りやすい例で説明しますね。
・
●全商品のうち20%の商品が、全売り上げの80%を占めている。
・
●全仕事のうち20%の仕事が、80%の成果を生んでいる。
こんな例えでピンときましたか?
原因と結果は、全てが比例している訳ではなく、2割の原因で8割の結果が生まれると言う訳です。
世の中のいろんな事象でこの法則は使用することが出来ます。
今、あなたの設計した商品のコストダウン検討で考えてみましょう。まず、購入品1点1点の原価を調べ、高額なものから順番に並べていきます。
| 品名 | 単価 | 個数 | 金額 |
| モーター | 35,000 | 4 | 140,000 |
| 減速機 | 28,000 | 4 | 112,000 |
| クラッチ | 18,000 | 4 | 72,000 |
| リニアガイド | 4,500 | 10 | 45,000 |
| 駆動ベルト | 4,000 | 7 | 28,000 |
| 反射式センサー | 3,000 | 5 | 15,000 |
こんな感じですね。
これを、横軸に部品、縦軸に金額をとって、棒グラフにします。金額の高いものから順番に並べます。
すると、山の高いものから順に並んだ棒グラフが出来ます。これを、「パレート図」と言います。

先ほどの『パレートの法則』に従って、20%の部品が80%の原価を構成していることが分るはずです。
パレート図はコストダウン検討だけでなく、品質改善のツールとしてQC7つ道具の1つでもあります。
仮に、あなたの設計では、部品点数が100点あって、原価合計が100万円だったとします。
すると、約20点の部品が80万円の原価を構成していることになります。逆に言えば、残り80点の部品を集めても20万円の原価にしかなりません。
そう、この80点がまさに「チリ」なのですね。だから、積もっても山にはならず、20%のせいぜい丘くらいでお終いです。
さて、どうすれば目標のコストダウンを達成することが出来るでしょうか。当然ですが、この重点部品20%に集中してコストダウン検討を行うべきですね。
これが最も効率よく目標を達成する道です。要は、何が重要な20%なのか、これを見つけることです。
部品の原価構成なら、1点1点価格を調べれば分るので、比較的容易ですね。先ほどのパレート図を作って見れば、一目瞭然です。
間違っても、その他20%から手を付けないように!時間、費用、エネルギー効率が悪く、思ったようにコストが下がりません。
先ほどの例では購入品でしたが、加工部品、組立て工数なども同様に調べて効率よくコストダウン検討を進めることが出来ます。
設計業務におけるパレートの法則
では、あなたの設計業務における重点20%って何ですか?その20%が、あなたの仕事の成果の80%を生み出しているはずです。
だったら、その20%にもっと集中出来るように仕事のやり方を工夫しましょう。そうすれば、今以上にもっと効率よく、大きな成果を生み出すことが出来るはずです。
20%の成果しか生まない80%の仕事は、言葉は悪いですが「手を抜く」ことを考えなくてはいけません。
いかに自分の時間、エネルギーを使わずに済ますかを考えるべきです。あなたには、チリを積み上げるより、先に宝を積み上げる仕事が待っているのですから。
当サイトでは設計業務のノウハウを様々な角度から解説しています。それらの記事を参考にして頂きながら、あなたご自身の設計業務を見直してもらえたらと思います。

乾いた雑巾を絞ることも大事
では、『チリも積もれば山となる』と言う発想は全くムダな、役立たずなのでしょうか。いいえ、決してそんなことはありません。
即効性はありませんが、コストダウンを達成する体質強化、基礎体力強化には絶対に必要なのです。
1本のネジでもムダを省き、徹底したコストダウンの意識を磨くには必要な考え方、視点です。
また、いつまでも重点20%の改善を続けることは出来ません。何しろ部品としては20%しかないのですから、集中的にコストダウンを行えば、やがてネタは尽きてしまいます。
そこから先は、まさに乾いた雑巾を絞る、の世界です。設計レベルでの大幅なコストダウンは終わっても、現場で作業する中で、作業改善、コストダウン提案と言う形で途切れることなく、永遠のテーマとして継続させる、これは大事なことですね。

まとめ
コストダウンの検討を行うときも、何かの改善、合理化を行うときにも、まずはこのパレートの法則を思い出して下さい。
お宝の20%と、チリの80%をまず見つけるのです。
『チリも積もれば山となる』
あなたの設計業務においては、このフレーズは後回しにしましょう。チリはすぐに見つかるし、積むのも簡単かも知れませんが、今の時代はそれでは間に合わないのです。
何を真っ先に取り組むか、優先順位の決定は重要だと認識しましょう。それにはパレートの法則を活用して下さい。



