品質管理

「品質管理の1日」とはどんな1日でしょうか。どんな仕事を、どんなふうにこなすのでしょうか?

品質管理の仕事未経験の人が、ネットの相談サイトなどでよくこの質問しています。

それに答えるべく、同じくネット上でいくつか「品質管理の1日」を紹介する記事が見られます。

でも、かなり多くの記事が「品質管理の1日」ではなく、「品質検査の1日」を紹介しています。

検査は品質管理の一部に過ぎず、他にも重要な仕事が山ほどあります。品質管理の1日は決して検査員の1日ではありません。

私自身の品質管理の体験もまじえて、「品質管理の1日」を書きたいと思います。これから品質管理の仕事を目指す人はぜひこの記事をお読み下さい。

 

「品質管理」と「品質検査」の違い

そもそも、品質管理の定義とは何でしょうか?

品質管理の定義とは?

品質管理とはJISの定義によると、

『品質管理とは、買手の要求に合った品質の品物または サービスを経済的に作り出すための手段の体系』

と書かれています。

非常に抽象的な説明ですが、ポイントは2つあります。

①買手の要求に合った品質

②経済的に作り出す

この2点が重要であり、同時に実現する必要があります。従って、顧客ごとに最適解を求められ、柔軟な対応が必要となります。

品質管理の日々の業務は、この定義を実現するために行うものです。ここを頭において、以下の本文をお読み頂ければと思います。

ネットに出ていた「品質管理の1日」

ある転職サイトに、「品質管理の1日」と言うタイトルのコラムが掲載されていました。

1000文字足らずの短いコラムだったのですが、私はそれを読んで相当強い違和感を感じました。

そのコラムを書いた人は品質管理の現場を知っているのだろうかと大いに疑問を持ちました。

少なくとも品質管理の実務経験者である私なら、このタイトルでこの内容は書きません。

早い話、そのコラムは「品質管理の1日」ではなく、「品質検査の1日」だったのです。それは製造部門の仕事と言った方がいい業務です。

その記事には朝8時半の朝礼から始まって、17時の終礼まで、コツコツと検査員としての役目を果たすルーチンワークを切り取った1日が書かれていました。

 

目視検査2

 

そこに書かれてあった品質管理の1日はこんな感じです。(そのままコピーではなく一部変えています)

矢印アイコンネットに出ていた品質管理の1日

●8時30分~9時 朝礼・検査業務の準備

●9時~12時 検査業務開始

●12時~13時 お昼休み 昼食

●13時~15時 検査業務

●15時~16時 課内ミーティング出席

●16時~17時 業務報告書作成

●17時 帰宅

これはあくまで検査員としての1日のスケジュールです。品質管理の1日を説明したものとは言えません。

矢印アイコン品質検査は品質管理の一部に過ぎない

確かに品質検査も品質管理の一部には違いありませんが、全てではありません。品質管理の1日を紹介するには説明不足と言えます。

つまり品質検査は品質管理を行うための1つの施策に過ぎません。先の品質管理の定義を思い出して下さい。

そもそも量産品の品質検査なら製造部門の仕事であり、品質管理部門が日々生産ラインに入って検査を行うことはありません。

ただし出荷前検査として抜き取り検査を品質管理部門が行うなど、日々の生産に関わる業務もゼロではありません。

PDCAサイクル

 

これが品質管理の1日です

一方、私が半導体工場で見て来た品質管理の1日は、前述のようなルーチンのスケジュールではありませんでした。

朝はメールチェックから始まりますが、その後の仕事は日によって違います。

品質管理の1日には、3種類の仕事が混在しています。

●毎日のルーチン作業

●毎月のルーチン作業

●不定期業務

この3種類の業務を、その日によって割合を変えながらこなしています。

毎日のルーチン業務

まずは毎日のルーチン業務です。社内にいる時は必ずこのルーチンはこなします。

●朝礼

●メールチェック

●課内ミーティング(本日の勤怠・予定確認)

●品質確認業務

●業務報告

●終礼

毎日のルーチンで行う品質確認業務と言うのは、生産ラインに直結した業務です。例えば、生産現場の日々の品質記録の確認や、異常ロットの発生状況チェックなどです。

生産ラインの中で検査工程を担当するのは製造部門の仕事であり、品質管理の業務ではありません。

特別な抜き取り検査や、クレーム対応新規ライン立ち上げなどの理由で、品質管理の担当者が特別に検査工程に入ることはありますが、あくまで特別な処置です。

ただし製造部門とは別に品質チェックを行う意味で品質管理部門が生産ラインの出荷前検査などをルーチンで行うことはあります。

毎月のルーチン業務

毎月のルーチン業務は企業によって様々です。工場内の定期の品質確認、顧客との定期会議などは月次で行われることが多いので、これが毎月のルーチン業務のメインとなります。

●品質月報の作成

●社内品質会議の開催

●定期内部監査

●顧客先との品質会議に出席

これらの毎月のルーチン業務は私が勤務していた半導体工場の例です。私も全ての業務に関わっていました。

私の半導体工場ではISO9001の認証を受けていたため、月次で作成する品質記録がかなりの量ありました。

不定期な業務

品質管理の仕事で最も大変だったのは、不定期に発生する業務です。想定外に発生することも多く、かなりのエネルギーを使いました。

●カスタマークレーム対応

●異常ロット発生対応(社内生産ライン)

●新規ライン・変更ラインの品質管理評価

●外部監査対応(顧客や認証機関など)

ざっとこんな感じです。

特にカスタマークレーム異常ロットの発生は前もって発生が分かりません。しかし、いったん発生したら最優先の処理が必要となり、他の業務をストップして対応することになります。

クレーム対応や異常ロット対応以外はだいたい予定が決まっているので、毎月の業務の中に落とし込んで予定を立てます。

クレーム対応が最もハードな業務

クレーム対応はいつ発生するか事前に分からないので予定の立てようがありません。しかも、いざ発生すると最優先対応となり他の業務はストップとなります。

残業や休出で対応することも珍しくありません。

 

まずはクレーム発生状況の把握から原因調査、出荷停止や製品回収などの緊急対応が必要です。

次に出荷再開に向けての暫定対策実施、そして不良発生に歯止めをかけた恒久対策の実施を行います。

クレーム発生から収束まで顧客や市場への説明など、一刻を争うスピードと情報の正確さが要求されます。

私はこのクレーム対応に押しつぶされて精神を病んでしまった担当者を何人か知っています。顧客対応、市場対応はそれほどプレッシャーのかかる仕事です。

「品質管理に向いている人・不向きな人」でも書きましたが、メンタルの強い人が品質管理の仕事に向いています。

いきなり発生するクレームに対して冷静に、迅速に、かつ正確に対応するには強靭な精神力が不可欠です。

日次・月次・不定期が混在する品質管理の1日

以上のように、品質管理の1日は毎日のルーチン、毎月のルーチン、不定期に発生する業務の3つが混在します。

それぞれがどのくらいの比率を占めるかは都度変わります。品質管理の仕事は状況に合わせて優先順位を考慮し、品質を確保した生産を継続させる使命を負っています。

あなたに品質管理の1日が、ぼんやりとでもイメージして頂けたでしょうか。

転職における品質管理と品質検査の違い

色々な転職サイトで品質管理の仕事を検索すると、検査員の仕事が含まれていることがあります。

そうした求人では、

「品質管理=品質検査」

と言う図式で募集しています。

品質検査の求人例

例えばこんな事例です。

ある転職サイトの半導体工場の「品質管理・品質保証」の求人ですが、具体的な仕事内容はこうです。

●半導体製造装置の工程検査書類チェック・運転検査・機能チェック・外観チェック

●半導体製造装置の新台ユニット検査

●半導体製造装置の単品部品検査(ユニットリーク検査、特殊ユニット洗浄及び検査)

●装置パッキングリスト作成

●装置出荷準備など

これらの主な業務は検査であり、更に製品出荷作業まで含まれています。

この作業内容を見ると、量産品のライン検査であり、製造工程に組み込まれているようです。

品質管理に必要な検査には違いないのですが、作業としては「品質検査」です。この作業に必要なのは検査に関する知識、検査スキルです。

品質管理の求人例

一方、「品質管理・品質保証」の求人として一般的な仕事内容はこうです。

●新製品、新工場の立上げにおける不具合発生の未然防止活動

●工程内で発生した不具合の改善活動

●更なる品質向上に向けた活動

●品質を確保するための仕組み作り

●仕入先品質の改善活動

これはある自動車部品工場の「品質管理・品質保証」の求人から抜粋しました。

品質管理全般をカバーする内容ではないものの、品質検査ではなく品質管理の仕事です。

この仕事に必要なのは品質管理に関する知識、スキルです。品質検査のように特定の検査工程だけに詳しいだけでは務まりません。

QC検定2級以上に合格しているとか、ISO認証業務で実績があるとか、品質管理業務の全体を理解して実践できる能力が必要になります。

ただ、品質検査の現場を体験していることは重要であり、品質管理の仕事をするには必須とも言えます。

 

QC7つ道具

あなたが品質管理の転職を望むなら

「品質管理の1日」がどんなものか知りたいあなたは、品質管理の仕事で転職を希望されているかも知れませんね。しかも、品質管理の実務は未経験かも知れません。

何しろ、「品質管理の1日」がどんなものか知りたいくらいですから。

そんなあなたの転職活動にお伝えしたいことは次の3点です。

①品質管理の求人では、未経験者歓迎案件はごくわずか。多くは実務経験が必須。従って品質管理業務が未経験のあなたには応募のハードルが高い。

②まずは応募ハードルの低い品質検査で実績を作り、次のステップで品質管理に転職する方法もあり。品質検査も品質管理の一部にはちがいない。

③品質検査をやりつつ、品質管理に関する知識、スキルを身に付けステップアップのチャンスを狙う。単に検査作業を続けるだけでは無理。

品質管理の求人はほとんどが正社員募集であり、品質検査は派遣社員募集の方が多いと言う違いがあります。

品質管理は企業として外部に出せない情報も扱うし、長期的にエキスパートを育てる必要のある業務です。

品質管理は正社員募集がほとんどになる理由はここにあります。

 

➡品質管理の転職におすすめの転職エージェント

まとめ

「品質管理の1日」は「品質検査の1日」ではないと分かって頂けたでしょうか。

もし未経験から品質管理の仕事を目指すなら、まずは品質検査の仕事からスキルを身に着けることをおすすめします。

品質管理の求人で未経験者が応募できる割合はせいぜい10%~15%程度ですが、品質検査ならもっとチャンスはあります。

未経験者歓迎案件が多く見つかります。

 

初心者OK

 

そこで品質管理に必要な知識やスキルを身に着けるのです。

まずはQC検定3級を目標に取り組むのもモチベーションアップに有効です。次の記事を参考にして下さい。

QC検定(品質管理検定)が転職に有利な資格ってホント?